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薬剤の使用過多による頭痛(MOH)— 記録での早期発見と対応
最終更新 2026年7月17日
薬剤の使用過多による頭痛(MOH)は、頭痛日誌で急性期薬の使用日数を追うことで、慢性化する前に気づけます。ICHD-3の目安・患者教育・予防療法の位置づけと、記録に基づく実践を頭痛専門医が整理します。
薬剤の使用過多による頭痛(MOH)は、急性期薬の使いすぎが、かえって頭痛を慢性化させてしまう状態です。頻度の高い頭痛の背景に潜んでいることが多く、見逃すと治療が難航します。逆に、頭痛日誌で急性期薬の使用日数を追うことで、慢性化する前に気づいて介入できます。
本稿では、MOHを記録からどう早期に見つけ、どう対応するかを、患者教育と予防療法の位置づけとあわせて整理します。
MOHを疑う使用日数の目安(ICHD-3 の診断基準)
国際頭痛分類(ICHD-3)では、既存の頭痛を持つ人が、次の頻度で急性期薬を3か月を超えて使用している場合をMOHの目安としています。
| 薬剤 | 使用日数の目安(3か月を超えて) |
|---|---|
| 単純鎮痛薬(NSAIDs・アセトアミノフェン) | 月15日以上 |
| トリプタン | 月10日以上 |
| 複合鎮痛薬・オピオイド・エルゴタミン | 月10日以上 |
重要なのは、患者さんが「使いすぎている自覚がない」ことが多い点です。市販薬や複数の薬を併用していると、合計の使用日数が見えにくくなります。だからこそ、記録で客観的に日数を把握することが早期発見の鍵になります。
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飲んだ日が自動で集計され、月ごとの使用日数をグラフで確認。閾値に近づく前の介入に。施設利用は無料です。
記録での早期発見 — 閾値に近づく前に
頭痛日誌で急性期薬を飲んだ日を記録しておくと、月ごとの使用日数がグラフとして見えます。閾値に達してから対応するのではなく、近づいた段階で生活・薬剤指導や予防療法の検討に移る——この「一歩手前での介入」がMOHを防ぎます。
市販薬(OTC)の使用は診察で把握しづらく、MOHの盲点になりがちです。「痛くなったら何錠くらい、月に何日飲んでいるか」を記録として残すよう促すと、実態が見えてきます。
MOHが疑われたときの対応
対応の柱は、①原因薬の使いすぎの是正 ②予防療法による発作頻度の低減 ③患者教育の3つです。
- 原因薬の是正:使いすぎている急性期薬を患者さんと共有し、使用を減らす計画を立てます。中止の進め方(漸減か中止か)は薬剤や病態により異なります。
- 予防療法:発作頻度そのものを下げることが、急性期薬への依存を減らす近道です。従来の予防薬やCGRP関連薬を、病態に応じて検討します。
- 患者教育:「痛み止めが、かえって頭痛を増やすことがある」という機序を、記録の数値を見せながら説明すると納得が得られやすくなります。
患者さんに「気づいてもらう」ために
MOHの是正は、患者さん自身の納得と行動が欠かせません。使用日数がグラフで可視化されると、「思ったより飲んでいた」と本人が気づきやすくなり、行動変容につながります。記録は、医師の判断材料であると同時に、患者教育のツールでもあります。
頭痛専門医が開発した無料アプリ「ズツノート」では、急性期薬を飲んだ日が自動で集計され、月ごとの使用日数として可視化されます。かかりつけ設定をした施設の医師は、その推移を診察画面で確認でき、閾値に近づく前の介入に役立ちます。電子カルテとの連携やIT工事は不要です。
医療機関の方へ — 施設利用は完全無料
患者さんが記録した頭痛日誌を、先生のスマホ1台でそのまま確認。カルテ連携・IT工事は不要です。
本稿は一般的な考え方の整理です。MOHの診断・中止の進め方・予防療法の選択は、患者さんの病態や併存疾患をふまえた臨床判断で行ってください。急性発症・増悪する頭痛では二次性頭痛の除外を優先します。
まとめ
MOHは、頭痛日誌で急性期薬の使用日数を追うことで、慢性化する前に見つけられます。対応は「原因薬の是正・予防療法・患者教育」の3本柱。使用日数の可視化は、早期介入と患者教育の両方に効きます。記録で頭痛診療を支えたい先生は、医療機関向けのご案内もご覧ください。
よくある質問
MOHはどのくらいの使用日数で疑いますか?
ICHD-3では、既存の頭痛を持つ人が、単純鎮痛薬は月15日以上、トリプタン・複合鎮痛薬・オピオイド・エルゴタミンは月10日以上の使用を3か月を超えて続ける場合をMOHの目安としています。頭痛日誌で使用日数を月単位で追うと、閾値に近づいた段階で早めに介入できます。
MOHが疑われたら、どう対応しますか?
まずは原因となっている急性期薬の使いすぎを患者さんと共有し、使用を減らす計画を立てます。あわせて、発作頻度を根本から下げるための予防療法を検討します。中止の進め方(漸減か中止か)は薬剤や病態により異なるため、個々の臨床判断で行います。
患者さんにどう説明すると伝わりやすいですか?
「痛み止めが、かえって頭痛を増やしていることがある」という点を、記録の数値を見せながら伝えると納得が得られやすいです。使用日数がグラフで可視化されると、患者さん自身が使いすぎに気づきやすくなります。
使用日数のモニタリングを楽にする方法はありますか?
頭痛記録アプリ「ズツノート」では、急性期薬を飲んだ日が自動で集計され、月ごとの使用日数として可視化されます。かかりつけ設定をした施設の医師は、その推移を診察画面で確認でき、閾値に近づく前の介入に役立ちます。
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執筆・監修者
脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学 脳神経内科で診療・研究に従事したのち、頭痛診療に専念。頭痛診療に欠かせない頭痛日誌が、いまだに紙での運用が多く、市販のアプリも使いにくいものばかりであることに課題を感じ、自ら頭痛日誌アプリ『ズツノート』を開発した。エンジニアとしても活動する“つくる頭痛専門医”として、診療と開発の両面から頭痛医療に取り組んでいる。
現在の所属:埼玉精神神経センター 頭痛専門外来 / 荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
開発した頭痛日誌アプリ「ズツノート」を見る頭痛は「我慢するもの」ではなく「付き合い方を整えるもの」です。自分に合った頭痛外来を見つけることが、その大切な第一歩になります。
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