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頭痛の評価尺度を使い分ける — MIDAS・HIT-6・MSQ・MIBS-4・WPAI・SF-36
最終更新 2026年7月17日
頭痛診療では、頻度だけでなく「生活への支障・QOL・生産性」をとらえることが治療目標になります。MIDAS・HIT-6・MSQ・MIBS-4・WPAI・SF-36の違いと使い分け、回顧式尺度の限界、そして日次評価という選択肢まで、頭痛専門医が整理します。
頭痛診療の目標は、頭痛の回数を減らすことだけではありません。頭痛が生活・仕事・QOL にどれだけ影響しているか、そしてそれが治療でどう変わったかをとらえることが、治療の質を左右します。そこで役立つのが、標準化された評価尺度(アウトカム指標)です。
本稿では、代表的な MIDAS・HIT-6・MSQ・MIBS-4・WPAI・SF-36 の違いと使い分け、回顧式尺度の限界、そして「日次評価」という選択肢までを、頭痛専門医の視点で整理します。
頭痛の評価尺度は「何を測るか」で選ぶ
評価尺度は、大きく①生活・仕事への支障(障害度)②片頭痛に特異的なQOL ③発作間欠期の負担 ④労働生産性 ⑤包括的なQOLを測るものに分けられます。目的に応じて使い分けるのが実践的です。
| 尺度 | 測るもの | 対象期間の目安 |
|---|---|---|
| MIDAS | 頭痛による生活・仕事の支障(障害度)。Grade I〜IV | 過去3か月 |
| HIT-6 | 頭痛が日常に与える影響度(6項目の総合スコア) | 直近(約4週間) |
| MSQ | 片頭痛に特異的なQOL(役割機能の制限・予防、情緒機能) | 過去4週間 |
| MIBS-4 | 発作間欠期(頭痛のない期間)の負担(4項目) | 間欠期 |
| WPAI | 労働生産性(欠勤・出勤時の生産性低下)と活動障害 | 直近(約7日) |
| SF-36 | 疾患を問わない包括的なQOL(8下位尺度) | 過去4週間 |
障害度:MIDAS と HIT-6
MIDASは過去3か月の支障日数などから重症度をGrade I〜IVで把握でき、導入時の評価に向きます。HIT-6は直近の影響度を6項目で総合的にとらえ、比較的短期の変化のモニタリングに使いやすい尺度です。導入時にMIDASで重症度、経過はHIT-6で追う、という組み合わせが実践的です。
片頭痛特異的QOL:MSQ
MSQ(Migraine-Specific Quality of Life Questionnaire)は、片頭痛に特化したQOL尺度です。役割機能の制限・役割機能の予防・情緒機能という領域から、片頭痛が生活の質に及ぼす影響をとらえます。「支障の日数」だけでは見えにくい、質的な生活への影響を評価したいときに有用です。
間欠期の負担:MIBS-4
頭痛の負担は発作時だけではありません。MIBS-4(Migraine Interictal Burden Scale)は、発作のない間欠期の負担——仕事・社会生活・計画・感情への影響——を4項目でとらえます。「次はいつ来るか」という先取り不安など、頭痛のない日にも続く負担を可視化できるのが特徴です。
就労への影響:WPAI
WPAI(Work Productivity and Activity Impairment)は、欠勤(アブセンティーズム)と出勤していても生産性が落ちる状態(プレゼンティーズム)、および日常活動の障害を評価します。就労世代に多い片頭痛では、社会的・経済的アウトカムとして重要です。
包括的QOL:SF-36
SF-36は疾患を問わない包括的なQOL尺度で、身体・精神を含む8つの下位尺度から健康関連QOLを多面的にとらえます。片頭痛特異的な尺度(MSQ)と組み合わせると、疾患特異的な影響と、全体的な健康度の両面を評価できます。
尺度と日々の記録を、ひとつの画面で
MIDAS・HIT-6などのスコアや日々の支障を、診察画面でそのまま確認。施設利用は無料です。
頻度(日誌)× 支障度(尺度)の両輪でみる
頭痛日誌が示す頻度と、評価尺度が示す支障度・QOLは、別の側面をとらえています。両方を追うことで、治療効果を立体的に判定できます。たとえば「頭痛日数は大きく減っていないが、HIT-6やMSQは改善している」というケースでは、発作は残っていても生活への影響は軽くなっていると読めます。
回顧式尺度の限界と「日次評価」という選択肢
ここまでの尺度は、いずれも一定期間をふり返る回顧式です(MIDAS=過去3か月、HIT-6=直近4週、WPAI=直近7日 など)。回顧式には、思い出しバイアスや、日々の変動・頭痛のない日の負担が平均に埋もれてしまうという弱点があります。
これを補うのが、日々の記録(日次評価)です。頭痛日数や、仕事・活動への支障、間欠期の負担などをその日のうちに記録すれば、思い出しバイアスを抑え、治療前後の変化を実態に近くとらえられます。
注意:MIDAS・HIT-6・MSQ・WPAI・SF-36 はもともと回顧式で用いる尺度です。これらを日次で運用するという意味ではありません。ポイントは、頭痛日数や日々の支障・間欠期の負担といった要素を日次で記録し、回顧式尺度と組み合わせて経過を追う、という考え方です。
運用のヒント — いつ・どうとるか
- 導入時:MIDASで重症度、必要に応じてMSQ・SF-36でQOLのベースラインをとる
- 治療変更の前後・数か月ごと:HIT-6・MSQなどで再評価し、変化を追う
- 日常:頭痛日誌で頻度と、日々の支障・間欠期の負担を継続記録する
課題は、これらのスコアをとって集計する手間と、日々の記録を続けてもらう負担です。ここでデジタルツールが役立ちます。
頭痛専門医が開発した無料アプリ「ズツノート」では、MIDAS・HIT-6などの回顧式スコアを記録できるほか、頭痛日数・仕事や活動への支障・間欠期の負担などを日次で記録・評価し、経過を自動でグラフ化します。かかりつけ設定をした施設の医師は、その推移を診察画面でそのまま確認できます。電子カルテとの連携やIT工事は不要です。
医療機関の方へ — 施設利用は完全無料
患者さんが記録した頭痛日誌を、先生のスマホ1台でそのまま確認。カルテ連携・IT工事は不要です。
本稿は一般的な考え方の整理です。各尺度の項目・対象期間・スコアリングや解釈、治療方針の決定は、原典と最新のガイドラインをご確認のうえ、患者さんの病態をふまえた臨床判断で行ってください。
まとめ
頭痛の評価尺度は、障害度(MIDAS・HIT-6)/片頭痛特異的QOL(MSQ)/間欠期負担(MIBS-4)/就労(WPAI)/包括的QOL(SF-36)を、目的に応じて使い分けます。いずれも回顧式のため、頭痛日数や日々の支障を日次で記録して補うと、経過をより正確に追えます。頻度と支障度の両輪で診療を支えたい先生は、医療機関向けのご案内もご覧ください。
よくある質問
MIDASとHIT-6はどう使い分けますか?
MIDASは過去3か月の頭痛による生活・仕事の支障日数を評価し、重症度をGrade I〜IVで把握するのに向きます。HIT-6は直近(おおむね4週間)の頭痛の影響度を6項目で総合的にとらえ、比較的短期の変化のモニタリングに使いやすい尺度です。両者は目的が異なるため、併用すると重症度と経過の両面を追えます。
MSQ・MIBS-4・WPAI・SF-36はどんなときに使いますか?
MSQは片頭痛に特異的なQOL尺度で、役割機能や情緒面への影響を評価します。MIBS-4は発作間欠期(頭痛のない期間)の負担、WPAIは労働生産性(欠勤・出勤時の生産性低下)、SF-36は疾患を問わない包括的なQOLを測ります。目的に応じて、片頭痛特異的QOL(MSQ)、間欠期負担(MIBS-4)、就労影響(WPAI)、包括的QOL(SF-36)を選び分けると、多面的に評価できます。
これらの評価尺度は日次でとるものですか?
いいえ。MIDAS(過去3か月)・HIT-6(直近4週)・MSQ・WPAI・SF-36などは、いずれも一定期間をふり返る回顧式の尺度で、通常は数週間〜数か月ごとに測ります。回顧式は思い出しバイアスや、日々の変動・頭痛のない日の負担が見えにくいという弱点があります。ズツノートでは、こうした側面のうち頭痛日数や仕事・活動への支障、間欠期の負担などを、あえて日次で記録・評価している点が特徴です。
スコアの記録・集計を効率化する方法はありますか?
頭痛記録アプリ「ズツノート」では、これらのスコアや日々の支障度を患者さんが記録でき、経過が自動でグラフ化されます。かかりつけ設定をした施設の医師は、その推移を診察画面でそのまま確認できます。
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執筆・監修者
脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学 脳神経内科で診療・研究に従事したのち、頭痛診療に専念。頭痛診療に欠かせない頭痛日誌が、いまだに紙での運用が多く、市販のアプリも使いにくいものばかりであることに課題を感じ、自ら頭痛日誌アプリ『ズツノート』を開発した。エンジニアとしても活動する“つくる頭痛専門医”として、診療と開発の両面から頭痛医療に取り組んでいる。
現在の所属:埼玉精神神経センター 頭痛専門外来 / 荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
開発した頭痛日誌アプリ「ズツノート」を見る頭痛は「我慢するもの」ではなく「付き合い方を整えるもの」です。自分に合った頭痛外来を見つけることが、その大切な第一歩になります。
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