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CGRP関連薬の効果判定と使い分け — 継続・変更・やめ時(休薬)
最終更新 2026年7月17日
抗CGRP抗体や経口CGRP拮抗薬(ゲパント)は、片頭痛予防の選択肢を広げました。その効果を「頭痛日数」や評価尺度でどう判定し、継続・変更をどう考えるか——記録に基づく実践を頭痛専門医の視点で整理します。
抗CGRP抗体や経口CGRP拮抗薬(ゲパント)の登場で、片頭痛予防の選択肢は大きく広がりました。一方で外来では、「この薬は効いているのか、続けるべきか」という判断を、限られた診察時間で行う必要があります。その判断の土台になるのが、頭痛日誌に基づく客観的な効果判定です。
本稿では、CGRP関連薬の効果を頭痛日数(MHD)や評価尺度でどう判定し、継続・変更をどう考えるかを、記録の活用という観点で整理します。
日本で使えるCGRP関連薬と使い分け(抗体・ゲパント)
まず、効果判定の前提として、日本で使用できるCGRP関連薬を整理します(承認状況は変わりうるため、最新の添付文書を確認してください)。
| 分類 | 一般名(主な製品名) | 承認 |
|---|---|---|
| 抗CGRP抗体(注射・予防) | ガルカネズマブ(エムガルティ) | 予防 |
| フレマネズマブ(アジョビ) | 予防 | |
| エレヌマブ(アイモビーグ) | 予防 | |
| 経口CGRP拮抗薬(ゲパント) | リメゲパント(ナルティーク) | 急性期・予防の両方 |
| アトゲパント(アクイプタ) | 予防(急性期は日本未承認) |
なお、ウブロゲパント(急性期)やエプチネズマブ(点滴・予防)は日本では未承認で、海外で用いられている将来の選択肢です。
効果判定の中心は「頭痛日数の変化」
CGRP関連薬の効果判定は、一般に投与開始から3か月程度を目安に行います。中心となる指標は月あたり頭痛日数(MHD)で、投与前と比べておおむね50%以上の減少がひとつの目安です。抗CGRP抗体は月1回などの投与のため、投与前の数か月のベースラインが記録として残っていると、判定が明確になります。
「50%減」はあくまで目安です。減少率が50%に満たなくても、強度・持続時間・生活支障が大きく改善していれば、継続を検討する材料になります。判定は数値だけでなく、患者さんの実感とあわせて総合的に行います。
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頭痛日数だけで判断しない — 多面的にみる
効果は頻度だけに表れるわけではありません。次の指標をあわせて見ると、機能面まで含めて判定できます。
| みる指標 | 効果判定での意味 |
|---|---|
| 月あたり頭痛日数(MHD) | 中心指標。投与前後で50%以上の減少がひとつの目安 |
| 急性期薬の使用日数 | 予防効果の裏づけ。使用日数が減れば負担軽減・MOH予防にも |
| 強度・持続時間 | 発作が残っても「軽く・短く」なっていれば改善のサイン |
| MIDAS・HIT-6 | 生活への支障・QOLの改善を数値で把握 |
| WPAI(労働生産性) | 仕事・活動への影響の変化。就労世代で重要 |
いつやめるか — 休薬(中止)の考え方
効果が十分に得られ、安定した状態が続いた場合には、一定期間ののちに休薬(中止)を検討することがあります。一方で、中止後には頭痛が再燃(relapse)することが少なくありません。再燃の程度や時期には個人差があり、再開によって再び改善が得られることも多く報告されています。
休薬のタイミングについては、十分な効果が得られたあと、より長く継続してから中止したほうが、中止後の再燃が少ない可能性が示されています。前向き多施設研究の I-GRAINE study では、12か月サイクルごとの休薬期を比較したところ、3年間(3サイクル)継続してから中止した群の慢性片頭痛への再燃は 2.3% にとどまり、2年間で中止した群の 18% より低いという結果でした(≥50%レスポンダー率も 77.8% vs 53.8% と良好)。著者らは、長期治療が片頭痛の経過そのものを良い方向に修飾しうると述べています(Barbanti P, et al. J Neurol. 2025)。
したがって、良好な反応が得られていても急いで中止せず、継続期間もふまえて休薬の時期を判断することが実践的です。最終的な休薬の可否・時期は、効果の安定性・患者さんの希望・保険上の要件などをふまえた個別判断になります。
記録があると、判定と対話が変わる
効果判定でしばしば難しいのは、投与前を患者さんも医師も正確に覚えていないことです。頭痛日誌で投与前のベースラインが数値として残っていれば、「効いているのか」を患者さんと画面で共有しながら判断できます。
投与前後の変化を自動で比較(画面例)

※ サンプルデータによる表示例。診察日を登録すると、その前後でMHD・強度・急性期薬使用・支障度が自動で比較されます。
頭痛専門医が開発した無料アプリ「ズツノート」では、患者さんが記録した頭痛日数や急性期薬の使用が自動でグラフになり、診察日の前後で自動比較されます。患者さんがかかりつけとして施設を設定すると、その推移が医師の画面にそのまま届きます。電子カルテとの連携やIT工事は不要です。
医療機関の方へ — 施設利用は完全無料
患者さんが記録した頭痛日誌を、先生のスマホ1台でそのまま確認。カルテ連携・IT工事は不要です。
本稿は一般的な考え方の整理です。薬剤の適応・用法・効果判定の基準・継続や休薬の判断は、最新の添付文書とガイドラインに基づき、患者さんの病態をふまえた臨床判断で行ってください。
まとめ
CGRP関連薬の効果判定は、投与前後の頭痛日数の比較が基本で、急性期薬使用・強度・MIDAS/HIT-6・WPAIを加えると多面的に判断できます。鍵は投与前のベースラインを記録として残しておくこと。データで頭痛診療を支えたい先生は、医療機関向けのご案内もご覧ください。
よくある質問
CGRP関連薬の効果は、いつ判定しますか?
一般に、投与開始から3か月程度を目安に評価します。中心指標は月あたり頭痛日数(MHD)で、投与前と比べておおむね50%以上の減少がひとつの目安です。抗CGRP抗体は月1回などの投与のため、数か月の頭痛日誌があると投与前後の比較が明確になります。
日本で使えるCGRP関連薬にはどんなものがありますか?
予防に用いる抗CGRP抗体(注射)として、ガルカネズマブ・フレマネズマブ・エレヌマブがあります。経口薬では、リメゲパントが急性期・予防の両方で、アトゲパントが予防で承認されています(アトゲパントの急性期は日本未承認)。薬剤選択は病態・併存疾患・投与経路の希望などから個別に判断します。
効果判定に頭痛日数以外は見なくてよいですか?
頭痛日数に加え、急性期薬の使用日数、MIDAS・HIT-6、仕事や生活への支障(WPAI 等)もあわせて見ると、機能面の改善まで多面的に判定できます。頭痛日数の減りが50%未満でも、強度や生活支障が大きく改善していれば、継続を検討する材料になります。
CGRP関連薬は、いつやめればよいですか(休薬のタイミング)?
効果が十分に得られ安定した状態が続いた場合に、一定期間ののちに休薬を検討することがあります。ただし中止後は頭痛が再燃することが少なくありません。より長く継続してから中止したほうが中止後の再燃が少ない可能性も指摘されており、良好な反応が得られていても急いで中止せず、継続期間もふまえて時期を判断するのが実践的です。最終的な休薬の可否・時期は、効果の安定性・患者さんの希望・保険上の要件をふまえた個別判断になります。
記録があると効果判定はどう変わりますか?
投与前のベースラインが客観的な数値で残るため、「効いているのか」を患者さんと画面で共有しながら判断できます。頭痛記録アプリ「ズツノート」では、診察日の前後で頭痛日数・強度・急性期薬使用が自動で比較され、継続・変更の判断材料になります。
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執筆・監修者
脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学 脳神経内科で診療・研究に従事したのち、頭痛診療に専念。頭痛診療に欠かせない頭痛日誌が、いまだに紙での運用が多く、市販のアプリも使いにくいものばかりであることに課題を感じ、自ら頭痛日誌アプリ『ズツノート』を開発した。エンジニアとしても活動する“つくる頭痛専門医”として、診療と開発の両面から頭痛医療に取り組んでいる。
現在の所属:埼玉精神神経センター 頭痛専門外来 / 荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
開発した頭痛日誌アプリ「ズツノート」を見る頭痛は「我慢するもの」ではなく「付き合い方を整えるもの」です。自分に合った頭痛外来を見つけることが、その大切な第一歩になります。
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