ズツノート presents ・ 頭痛外来ガイド

頭痛ダイアリーを診療に活かす — 記録指導から効果判定まで

最終更新 2026年7月17日

頭痛診療において、頭痛日誌(頭痛ダイアリー)は診断・治療方針・効果判定の土台になります。外来で記録をどう指導し、どう読み解き、治療効果をどう判定するか——頭痛専門医の視点で実践的に整理します。

前川 裕貴 - 頭痛専門医

この記事の監修・執筆

前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

頭痛日誌アプリ「ズツノート」開発者

日本頭痛学会 専門医日本神経学会 専門医日本内科学会 内科専門医難病指定医

ズツノートとは?

頭痛専門医が開発した無料の頭痛日誌アプリ。頭痛・お薬・体調を記録するだけで自動でグラフ化し、主治医にそのまま共有できます。

くわしく見る

頭痛診療は、「その場の一枚の写真」ではなく「経過という動画」で診る領域です。片頭痛をはじめとする一次性頭痛は、来院時の数分間の問診だけでは頻度・パターン・治療反応をとらえきれません。そこで土台になるのが頭痛日誌(頭痛ダイアリー)です。

本稿では、外来で頭痛ダイアリーを①どう記録指導し ②どう読み解き ③どう効果判定に使うかを、実践的に整理します。あわせて、記録が続かない・持参されないという長年の課題を、デジタル頭痛日誌でどう解決するかにも触れます。

なぜ頭痛診療では「記録」が要になるのか

頭痛の治療方針は、多くが頻度と負担で決まります。とくに予防療法の導入判断や薬剤の使用過多の把握には、来院時の記憶に頼るのではなく、日々の客観的な記録が欠かせません。頭痛ダイアリーから読み取りたい主な情報は次のとおりです。

記録項目診療での意味
頭痛のあった日数(MHD)重症度の把握・予防療法の導入判断・効果判定の中心指標
急性期薬の使用日数/月薬剤の使用過多による頭痛(MOH)のリスク評価
痛みの強さ・持続時間発作の重症度と、治療による変化の把握
前兆・随伴症状頭痛型の鑑別(片頭痛/緊張型など)の手がかり
誘因(睡眠・月経・気圧・ストレス等)患者ごとのトリガー同定と生活指導

① 記録を「続けてもらう」ための指導

頭痛ダイアリーの最大の壁は、継続率です。紙のダイアリーは記入負担が大きく、数週間で脱落したり、受診時に持参を忘れたりしがちです。継続してもらうために、外来では次のような点を伝えると効果的です。

  • 「痛くなかった日」も記録する:効果判定では「頭痛のなかった日」が分母になります。無頭痛日を含めて記録して初めて、頻度の変化が正確に読めます。
  • 記入は毎日・短時間で:詳細を完璧に書くより、続くことが大切。数タップで終わる仕組みが望ましいです。
  • 急性期薬を飲んだ日は必ず記録:MOHの早期発見に直結します。

こうした「毎日・簡単に・無頭痛日も」という条件は、スマートフォンアプリと相性が良い領域です。通知でのリマインドや、数タップでの入力、自動でのグラフ化により、継続率と情報の質を同時に上げられます。

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② 記録から読み解く臨床指標(MHD・急性期薬使用日数・MOH)

MHD(月あたり頭痛日数)

頭痛診療でもっとも基本となる指標です。予防療法の導入を検討する目安や、治療効果の判定基準として広く用いられます。日誌上で月ごとのMHDの推移を追えると、方針決定がぶれにくくなります。

急性期薬の使用日数とMOH

急性期薬の使いすぎは、頭痛をかえって慢性化させます。薬剤の使用過多による頭痛(MOH)は、頭痛ダイアリーで使用日数を月単位で追うことで早期に気づけます。国際頭痛分類(ICHD-3)では、おおむね次が目安とされます。

薬剤MOHの目安(3か月を超えて)
単純鎮痛薬(NSAIDs・アセトアミノフェン)15日以上
トリプタン・複合鎮痛薬・オピオイド・エルゴタミン10日以上

使用日数が閾値に近づいた段階で日誌上に可視化されると、MOHに至る前の生活・薬剤指導や予防療法の検討に移りやすくなります。閾値はあくまで目安であり、最終的な診断・介入は個々の臨床判断によります。

MIDAS・HIT-6(機能障害・QOL)

頻度だけでなく、生活への支障も治療の目標です。MIDAS(過去3か月の生活支障度)やHIT-6(頭痛の影響度)は、治療前後の変化を数値でとらえるのに有用です。頭痛ダイアリーと組み合わせ、経時的にスコアを追うと、患者と一緒に改善を確認できます。

③ 治療効果をどう判定するか(頭痛日数・MIDAS・HIT-6)

予防療法の効果は、一般に3か月程度を目安に評価します。中心となるのはMHDの変化で、おおむね50%以上の減少がひとつの目安です。あわせて、急性期薬の使用日数、MIDAS・HIT-6、仕事や生活への支障(WPAI 等)を見ると、多面的に判定できます。

近年広がったCGRP関連薬の効果判定でも、この「投与前後のMHDと急性期薬使用の比較」が基本になります。CGRP関連薬には、予防に用いる注射薬(抗CGRP抗体:ガルカネズマブ・フレマネズマブ・エレヌマブ)や、経口薬(リメゲパント〔急性期・予防の両方で承認〕、アトゲパント〔予防〕)があり、いずれも「どれだけ頭痛日が減ったか」を客観的な記録で示せることが、継続・変更の判断材料になります。

診察前後の変化を自動で比較(画面例)

診察日の前後で頭痛日数・強度・急性期薬の使用が変化したことを自動で比較した画面例

※ サンプルデータによる表示例。診察日を登録すると、その前後でMHD・強度・急性期薬使用・支障度が自動で比較されます。

頻度だけでなく「間欠期の負担」まで診る

頭痛の負担は、発作時だけではありません。次の発作への不安(先取り不安)や、頭痛のない日の集中力・気分の落ち込みなど、間欠期の負担も患者のQOLを大きく左右します。こうした間欠期負担(MIBS-4 など)や労働生産性(WPAI)は、通常は回顧式の尺度で測りますが、頭痛日数や日々の支障をその日のうちに記録しておくと、平均に埋もれがちな日々の変動までとらえられます。従来の来院時の回顧的な聞き取りでは見えにくかった側面です(各尺度の使い分けは頭痛の評価尺度の使い分けでくわしく解説します)。

デジタル頭痛日誌という選択肢

紙の頭痛ダイアリーは、記入負担・持参忘れ・判読性という課題がつきまといます。スマートフォンの頭痛記録アプリは、これらを解消しつつ、記録がそのまま自動でグラフ化・共有される点が診療上の利点です。

頭痛専門医が開発した無料アプリ「ズツノート」では、患者さんが記録した頭痛・服薬・睡眠・気圧などが自動でグラフになります。患者さんがかかりつけとして施設を設定すると、その記録が医師の画面にそのまま届き、30日チャート・経過サマリー・診察前後の比較を確認できます。電子カルテとの連携やネットワーク工事は不要で、先生のスマホ・タブレットのブラウザで完結します。オンプレミス型のカルテや紙カルテの施設でもそのまま使えます。

医療機関の方へ — 施設利用は完全無料

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本稿は診療の一般的な考え方を整理したものです。個々の診断・治療方針・薬剤選択は、患者さんの病態や併存疾患をふまえた臨床判断によります。急性発症・増悪する頭痛や神経学的異常を伴う場合は、二次性頭痛の除外を優先してください。

まとめ

頭痛ダイアリーは、診断の手がかり・MOHの早期発見・効果判定のすべての土台になります。鍵は「毎日・簡単に・無頭痛日も記録が続くこと」。デジタル頭痛日誌なら継続率と情報の質を高めつつ、記録を診察画面でそのまま共有できます。頭痛診療にデータを取り入れたい先生は、医療機関向けのご案内もご覧ください。施設のご利用は無料です。

よくある質問

予防薬の効果判定は、いつ・何を基準に行いますか?

一般に、予防薬は3か月程度を目安に評価します。中心となる指標は月あたりの頭痛日数(MHD)で、おおむね50%以上の減少がひとつの目安です。あわせて急性期薬の使用日数、MIDAS・HIT-6の変化、仕事や生活への支障(WPAI等)も見ると、多面的に判定できます。頭痛日誌でこれらを継続記録しておくと、投与前後の比較が容易になります。

薬剤の使用過多による頭痛(MOH)はどう見分けますか?

頭痛日誌で急性期薬の使用日数を月単位で追うのが基本です。ICHD-3では、単純鎮痛薬は月15日以上、トリプタン・複合鎮痛薬・オピオイド・エルゴタミンは月10日以上が3か月を超えて続く場合をMOHの目安としています。日々の使用回数を記録しておくと、閾値に近づいた段階で早めに介入できます。

記録が続かない患者さんには、どう工夫していますか?

紙の頭痛ダイアリーは記入負担が大きく脱落しがちです。スマホアプリで毎日数タップに簡略化し、通知でリマインドすると継続率が上がります。「痛くなかった日も記録する」ことが効果判定には重要である点を、あらかじめ共有しておくとよいでしょう。

デジタル頭痛日誌の導入に、費用やIT作業は必要ですか?

頭痛記録アプリ「ズツノート」は、施設利用・掲載ともに無料で、電子カルテとの連携やネットワーク工事も不要です。患者さんがかかりつけとして施設を設定すると、記録が医師の画面にそのまま届き、経過グラフや診察前後の比較を確認できます。

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執筆・監修者

前川 裕貴 - 頭痛専門医・ズツノート開発者
前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

頭痛日誌アプリ「ズツノート」開発者

日本頭痛学会 専門医日本神経学会 専門医日本内科学会 内科専門医難病指定医

脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学 脳神経内科で診療・研究に従事したのち、頭痛診療に専念。頭痛診療に欠かせない頭痛日誌が、いまだに紙での運用が多く、市販のアプリも使いにくいものばかりであることに課題を感じ、自ら頭痛日誌アプリ『ズツノート』を開発した。エンジニアとしても活動する“つくる頭痛専門医”として、診療と開発の両面から頭痛医療に取り組んでいる。

2020–2023東京大学 脳神経内科
2023–昭和医科大学 客員講師 / 埼玉精神神経センター 頭痛専門外来 / 荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
2025–株式会社 Iris Wellness 代表(頭痛日誌アプリ「ズツノート」を開発・運営)

現在の所属:埼玉精神神経センター 頭痛専門外来 / 荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長

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